MEDICAL
コロナ後遺症
コロナ後遺症とは
WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイルス後遺症を「新型コロナウイルス患者数の発症から通常3ヵ月間以内に見られ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明できないもの」と定義しています。この定義をもとに、さまざまな研究が行われています。
ある追跡調査では、新型コロナウイルス感染症で入院した1,066例の患者を対象に、診断から12ヵ月経った段階で約30%、つまり約3人に1人に後遺症があることが確認されました。また、感染された方が有する罹患後症状の率は、感染していない方が有する何らかの症状の率よりも2~3倍高いという知見が得られています。
しかし、後遺症の発生頻度については、研究によって定義や調査手法が異なるため、一概に比較するのは困難です。症状がある人の方が調査に積極的に参加する傾向(回答バイアス)が存在することから、調査には限界があります。WHOによると、これまでの研究ではCOVID-19感染者の約10~20%に罹患後症状が発生するとされています。
東京都の「コロナ後遺症相談窓口」には、年齢や基礎疾患の有無、新型コロナウイルス感染症の重症度に関わらず、さまざまな相談が寄せられています。若い世代や基礎疾患のない方、軽症だった方も後遺症と無縁ではなく、幅広い層が影響を受けていることが伺えます。
コロナ後遺症の症状
新型コロナウイルスに感染した後、回復した人々においても、さまざまな後遺症が見られることがあります。これには、感染時から続く症状と、回復してから新たに現れる症状が含まれます。
これらの後遺症の具体例としては、呼吸に関連する咳や痰、息苦しさが挙げられます。また、胸の痛みや心拍の異常といった循環器系の問題があります。さらに、全身の疲労感や筋力の低下、筋肉の痛みも見られます。精神的・神経的な側面では、記憶力の低下や頭痛、気分の不安定、集中力の減退、睡眠不足が報告されています。消化の不調や下腹部の痛み、脱毛、味覚や嗅覚の異常、関節の痛みなども後遺症として挙げられます。
多くのこれらの症状は、時間をかければ改善されると考えられていますが、1年経っても症状が引かない場合もあります。そのため、日常生活に影響を及ぼす可能性のある患者に対しては、専門的な医療サポートが重要とされます。
後遺症の発症・長期化がもたらす影響
新型コロナウイルス感染症の後遺症は、多くの場合、時間の経過とともに回復に向かうとされています。しかし、症状が1年以上持続するケースも報告されています。このような長期的な後遺症は、日常生活や仕事、学業において支障をもたらすことがあります。
特に、倦怠感を伴う身体症状や精神症状を有する集団では、休職の割合が36.5%から39.8%と、他の後遺症を持つ集団と比較して高いことが分かっています。この傾向は、倦怠感が患者の社会生活や労働に大きな影響を及ぼしていることを示しています。
後遺症患者で起きている様々な変化
COVID-19の後遺症については、まだ完全には解明されていない部分が多いですが、患者の体内で起きている変化が少しずつ理解され始めています。この理解を基に、後遺症の症状を予防し、改善するための方法が考えられています。
後遺症が現れた場合にどのように対応するかは重要ですが、そもそも後遺症が発生しないようにすることも同じくらい大切です。特に、体の中で起こる炎症や組織の損傷をできるだけ抑えることが、後遺症を防ぐために役立ちます。
後遺症発症リスク低減に向けた対策
COVID-19の後遺症を予防するためには、まずウイルスに感染しないことが最も効果的な方法です。そのためには、日常生活において基本的な感染対策を徹底することが重要です。具体的には、手洗いなどの手指衛生をしっかり行い、定期的な換気を心がけることが推奨されます。
また、密集、密接、密閉の「三密」を避けることも感染を防ぐための有効な手段です。さらに、マスクの着用についても、効果的な場面を選んで適切に行うことが求められます。これらの基本的な予防策を日々の生活で実践することが、COVID-19に感染しないための重要なステップとなり、その結果として後遺症の発症リスクを低減することが可能になります。
ワクチン接種について
COVID-19の後遺症リスクを低減するための有効な手段として、ワクチン接種があります。数々の報告により、ワクチンが後遺症の発症リスクを低めることが示されています。具体的には、ワクチンを接種した患者は、未接種の患者と比較して、COVID-19発症時の炎症性サイトカインの産生量が低いという結果が報告されています。これにより、ワクチンが持続的な炎症反応の抑制に寄与している可能性が考えられます。
また、COVID-19に感染する前にワクチンを接種することで、感染後の症状が軽減される可能性が示されています。一方で、既に罹患後症状がある人へのワクチン接種については、症状の変化を示すデータもあれば、変化が見られないデータもあり、一貫した見解は得られていない状況です。
COVID-19後遺症の病態は徐々に明らかになりつつあり、治療や予防のための方策も進展しつつあります。後遺症の発症リスクを低減するためには、ワクチン接種を重要な手段として捉えつつ、日常的な感染予防策の継続や、COVID-19発症時における抗ウイルス薬の適切な使用も考慮することが求められます。
気軽にご相談ください
コロナウイルス感染症に関しての問題はまだ解決されていないものが多いです。コロナウイルス後遺症の症状は、時間が経過するとともに治まる場合もありますが、完治までの期間も明らかになっていません。
当クリニックでは、患者さまの体と心に寄り添って、コロナウィルス感染症、後遺症の改善に取り組んでいきますので、まずはお気軽にご相談ください。